27/09/2010 | 14:16:00

アオザイ仕立て職人の街、ルオンバンカン通り

< 風になびくアオザイの身頃はベトナム文化の美しさの極みと賞されています。アオザイは一千年の歴史の中で、常にその美しさや可憐さが追求され続けました。

美の追求は現代のアオザイ仕立て職人にも伝えられ、巧みな職人により仕立てられたアオザイはベトナム国内のみならず世界のトップブランドとなっています。

かつてタンロンの人々は美しいものには目がないことで知られ、購買需要が高かったため、次第に各地の商人や職人がタンロンに集まり大きな市場を形成するようになりました。 

その当時、精巧な手工芸で栄えた旧ハドン省ソンナムの職人らは連れ立って、最大の市場であるタンロンへ手工芸品を売りに行くようになりました。職人たちは次第にタンロンに土地を買い、倉庫を持つようになり、その後は店を構え手工芸品を売るようになり、タンロンには手工芸の街(現ハノイ旧市街)が形成されました。

通称アオザイ通りで有名なルオンバンカン通りや、アオザイ仕立て職人の村として知られるウンホア郡チャックサ村もその一例です。ハノイ東京義塾校のルオン・バン・カン校長の名前が付けられた全長300メートルのその通りには、洗練されたアオザイを仕立てるテーラーが軒を並べます。この通りのテーラーの殆どはウンホア郡チャックサ村を根源に持ちます。

同村住民によると、かつて同村出身で王の第4妃だったグエン・ティ・センさんという女性が王宮で縫製を学び、同村住民に伝授したそうです。同村では現在も、グエン朝の王のアオザイを仕立てた職人や、若干30歳にして目測でバオダイ王とフオンナム王妃のアオザイを仕立てた凄腕の職人などの話が語り継がれており、同村は数百年に亘りアオザイと密接な関係で結ばれています。

同村の熟練職人が何世代にもわたりベトナム南部地方、北部地方で店を構えるようになり、特にハノイ市では市内あちらこちらに同村を根源とするアオザイテーラーが並びます。またこれらのテーラーは名前をミチャック、バンチャック、フオンチャックなどチャックサ村にちなんだ名前となっています。

結婚式シーズンに入る秋はアオザイテーラーの繁忙期であり、店には結婚式に着るアオザイのデザイン、生地選びに余念がない花嫁で賑わい、店主たちは客のコンサルティングや採寸に追われます。また外国人旅行客もベトナム旅行の記念に好みの生地でアオザイをオーダーします。

ルオンバンカン通り23番地にある創業50年のアオザイテーラー・ビンチャックは、レ・ティ・リュエンさん、レ・タイン・ビンさん夫婦が4代目です。リュエンさんが 初めてアオザイを仕立てたのは12歳の少女のときでした。当時、リュエンさんの父親は富裕層に名前の知れたアオザイ仕立て職人で、出張仕立てに一緒について行くこともよくありました。そしてリュエンさんも器用な手先が評価され、今ではハノイ市で有名なアオザイ仕立て職人の1人です。リュエンさん夫婦には7人の子供がいますが、みんな個人の仕事をしながら2足、3足のわらじで両親の後を継いでおり、ルオンバンカン通り8番地のアオザイテーラー・ビンチャックはリュエンさん夫婦の娘のお店です。

ルオンバンカン通り6番地のドゥックチャックは8月革命前の1945年に創業し、現在の3代目店主ヒエンさんは、故郷の伝統的な仕事に誇りを持っていると言います。アオザイテーラーの中でも格が違うと評判のドゥックチャックは、有名なモデルや歌手がアオザイをオーダーする他、中国からも発注があります。

最近では新しいアオザイテーラーが競うようにしてオープンしていますが、ハノイ市の人々は信頼性の高いチャックサ村のアオザイテーラーを好んで選びます。テーラーごとに独自の裁ち方、縫い方があり、職人は一針一針慎重に縫い上げます。アオザイの縫製はシンプルですが、毎度美しく仕上げブランドテーラーとなるのは容易なことではありません。

現在、ルオンバンカン通りのテーラーで仕立てられるアオザイは、顧客の年齢や着る機会に合わせてボートネック、スクエアネック、ノースリーブ、半そでなど伝統的な要素にモダンなアレンジを加えたものなど、デザインが豊富になっていますが、アオザイの美しさには変わりがありません。生地の種類も実に豊富になり、若い女性は薄手の生地を、年配の女性はビロードなどの厚手の生地を好むようです。また今年は伝統的な濃色の生地が流行っているとのことです。

アオザイテーラー・アンチャックの店主グエン・アイン・ズンさんは、これまでに様々なデザインのアオザイを数え切れないほど仕立ててきましたが、一番好きなのは伝統的なデザインのアオザイだと言います。伝統的なアオザイは、着る人の身体のラインを最も美しく見せてくれるそうです。

時が流れ、人々の生活が変わり、アオザイの種類も多様化していますが、アオザイは今でも他の衣服と代えることはできないベトナムの伝統衣装なのです。アオザイはこの先もずっとベトナムに伝えられ、ルオンバンカン通りもアオザイを語る上で欠くことのできない存在であり続けることでしょう。

印刷 お気に入り