13/07/2010 | 11:09:00

ハノイのカチュー

ハノイ市カットリン通りに位置する安国寺内にあるハノイ・カチュークラブ 。 写真:ディン・コン・ホアン(Dinh Cong Hoan)

カチュー(ベトナムの伝統音楽で、ハット・ア・ダオあるいはハット・ノイとも呼ばれる)は、様々な地方にある伝統的な民謡であるが、ハノイのように高貴で優雅なカチューを有する場所はないだろう。

その昔、有名なカチューの曲を作曲したのは、カオ・バー・クアット(Cao Ba Quat)、グエン・コン・チュ(Nguyen Cong Tru)、ズオン・クエ(Duong Khue)、チュ・マイン・チン(Chu Manh Chinh)、タン・ダー(Tan Da)などの傑出した作家たちである。

このことで、カチューを作り出すためには、詩心を持ったり、詩の規則とカチューの韻律を正確に把握できる詩人でなければならないことが理解できるだろう。フエン・タイン・クアン(Huyen Thanh Quan)の「懐郷の夕方」、タン・ダーの「秋の感覚」のようなカチュー独自の調子を持つ感情あふれる詩は、人々の心の中に入り、聞き手を感動させる。

ハノイのカットリン通りに位置する安国寺の中にあるハノイ・カチュークラブを主宰し、ダオ・ヌオン(カチューの歌手)でもあるレー・ティ・バック・ヴァン(Le Thi Bach Van)の20平米ぐらいしかない小さな部屋は、思わず間違えてしまったかと思うほど。都会の喧騒の中で、名曲、名琴、そしてダン・ダイ(3弦のリュート)、チョン・チャウ(小さな『賞賛』ドラム)、ファック(小さな竹の打楽器)などが揃っている「幽玄な宮」と言っても良いほどの素晴らしい空間であった。「カチューの道は非常に難しいものです。

天から授かった歌声以外にも、我慢強く、そして激しい鍛錬を継続させなければなりません。そして、すばやく深く理解し、優れた先生ともに勤勉に学ぶことも不可欠です」とバック・ヴァンさんは語る。同クラブに所属する女性たちは、カチュー歌手に扮し、まるで泉が鳴ったり、水が流れていたりするような拍子で、優しく、悲しく、そして激しい音調を変換しながら、夢中に歌っている。カチューは、声楽、器楽と文学から組み合わせられるものであり、カチュー愛好家は、音楽と文学の心がある人であると言われている。

有名なカチュー歌手について言えば、その昔、ベトナム北部のカチューコンクールで準優勝した歌手である、クアック・ティ・ホー(Quach Thi Ho)の名を忘れてはならない。彼女の名は、ソ連で刊行された「芸術における伝奇の人物」という書籍にも記されており、ホーさんの歌声は1998年に29カ国が参加した北朝鮮の平壌で開催された伝統音楽の国際フェスティバルにおける最も優秀な歌手の歌声とともに保存されている。また、カチュー芸術のもう一つの特徴は、チョン・チャウ(チャウドラム)の音色である。

チョン・チャウを叩くドラマー(官員ともいう)は、歌の上手さか琴を弾くのが素晴らしいと評価する「外の人」であったり、カチューの歌を作曲する「内の人」でもあったりする。チョン・チャウのドラマーは、詩の精神を把握し、歌声、琴の音、ファックの拍子の心を深く感じなければならないという。カチューの演奏に参加するだけでなく、それを評価したりするのである。

ベトナムのカチューは「チョン・チャウの神」と呼ばれるチュー・マイン・チン博士・詩人を擁しているが、演奏の夜、参加する芸人たちはいつもチョン・チャウを担当する「官員」が誰かとという。ベトナムだけにあるダン・ダイという長い三弦リュートと空を飛んでいるかのようなファックの音色、そして魅力的なチョン・チャウの音色。これらすべてが、ベトナムのカチュー芸術の心を作り出したのである。UNESCOにより、カチューが世界文化遺産と公認されるよう、ベトナムの音楽院および文化遺産局は書類を完成させている。

チャン・チー・コン(Tran Tri Cong)

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